企業秘密が漏えいしてしまったら…
もし万が一、自社の企業秘密が外部に漏えいしてしまった場合、おおまかに以下の3つの対応を考える必要があります。
1企業秘密が漏えいした先への対応
2漏えいした者に対する対応
3社内での対応
ただし、重要な秘密が漏えいした場合、社内のみで処理しようとするのではなく、すぐに弁護士に相談することをお勧めいたします。
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企業秘密が漏えいした先への対応例
● 速やかに「警告書」を送付して、情報の利用や漏えいの拡大をさせないように通告する。
● 漏えいした情報が不正競争防止法の「営業秘密」に該当しない情報だとしても、情報の利用や公表は不法行為の損害賠償責任を負う場合があり得るとして牽制して、さらなる被害拡大を防止する。
● 「営業秘密」の使用差止請求や損害賠償請求の訴訟提起や、仮処分命令申立を検討する。
※差止請求とは、不正競争(営業秘密の侵害の場合を含みます。)によって営業上の利益を侵害されたりそのおそれがある場合に、その利益を侵害する者に対して、侵害の停止や予防を請求することです。この請求に際しては、廃棄等の侵害の停止や予防に必要な行為を請求できます。
※仮処分とは、訴訟の結果を待っている間に被害が拡大するのを防ぐため、裁判所に仮の決定を出してもらうものです。
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漏えいした者に対する対応例
● 漏えいしたのが自社の従業員であれば懲戒処分の検討をする。
● 漏えいした者に対して損害賠償請求を検討する。
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社内での対応例
● 漏えいした情報が「営業秘密」であることや漏えいした過程の証拠を固める。
● 漏えいした原因を究明し、再度の漏えいが発生しないように対策をとる。
● 漏えいした情報が他社から開示された情報や顧客の個人情報の場合は、他社や顧客への対応についても検討する。
企業秘密が漏えいした際にとりうる措置
企業秘密が漏えいしてしまった場合、漏えいさせた者と相手企業に対処する法律として不正競争防止法があります。
不正競争防止法では、「営業秘密の侵害行為」を不正競争と定め、民事措置と刑事措置の2つが規定されています。
民事的措置
〇 差止請求権 (第3条)
〇 損害賠償請求権 (第4条)
〇 損害額・不正使用の推定等 (第5条等)
〇 書類提出命令 (第7条)
〇 営業秘密の民事訴訟上の保護(第10条等)
(秘密保持命令、訴訟記録の閲覧制限、非公開審理)
〇 信用回復の措置 (第14条)
刑事的措置
営業秘密侵害行為を行った者に対して、以下の罰則が規定されています。
〇 罰則(第21条)
・営業秘密侵害罪:10年以下の懲役もしくは2000万円以下
(国外使用等は3000万円以下)の罰金またはこれらの併科
〇 法人両罰(第22条)
・営業秘密侵害罪の一部:5億円(国外使用等は10億円)以下の罰金
〇 書類提出命令 (第7条)
〇 国外での行為に対する処罰(第21条第6項)
〇 営業秘密侵害行為による収益等の没収(21条10項等)
企業秘密が営業秘密として
法的に保護されるための3つの要件
企業秘密が漏えいした際に「営業秘密」として法的に保護されるためには、
不正競争防止法に記載された3つの要件を満たしている必要があります。
1秘密として管理されていること(秘密管理性)
企業秘密とされている情報に接触することが許されている従業員等からみて、その情報が会社にとって秘密としたい情報であることが分かる程度に、施錠管理やアクセス制限、マル秘マークの表示といった秘密管理措置がなされていること。
2有用な営業上又は技術上の情報であること(有用性)
公序良俗に反する内容の情報(脱税、不法投棄、有害物質の垂れ流しなど)は、有用性を否定され、法律上の保護の範囲から除外される。失敗した実験データなど、現実に利用されていない情報にも有用性が認められる場合がある
3公然と知られていないこと(非公知性)
情報の保有者の管理下以外では一般に入手できないことを指す。
公開されている情報の組合せであっても、その組合せの容易性やコストに鑑み非公知性が認められることがある。
実際にあった企業秘密漏えい事例
Case.01
日本の製鉄会社A社の従業員が、A社を退職後に韓国企業B社と共謀し、A社の企業秘密を高額報酬の受領を条件に漏えいさせていた。
A社は、企業秘密の使用差し止めと約1,000億円の損害賠償を求めてB社を提訴。最終的に、B社がA社に300億円を支払う形で和解となった。
Case.02
日本の電機メーカーであるD社は、提携先である米国E社に企業秘密を含む業務委託をしていた。
そのE社の元従業員から韓国F社にD社の企業秘密を漏えいさせられてしまった。
D社は、企業秘密を不正に取得されたとして約1,100億円の損害賠償を求めてF社を提訴。最終的に、F社がD社に約330億円を支払う形で和解となった。
なお、D社の企業秘密を外部に漏えいさせた元従業員には、懲役5年(実刑)、罰金300万円が科された。
Case.03
日本で教育事業を営むG社は、個人情報などの企業秘密の取り扱いを含めた業務委託をH社に依頼していた。
そのH社の従業員が、個人のスマートフォンに個人情報などを不正に入手し、外部の名簿業者I社に流出させていることが発覚。I社が不正に入手した個人情報は、複数の業者へと次々と転売されていた。
H社従業員の取得した個人情報が営業秘密にあたるとされ、同従業員には懲役2年6月及び罰金300万円の有罪判決が下された。